
(岐阜県本巣郡界隈に伝わるみょうがぼち)
先日早々に、9月9日の重陽の節句にちなんだ「着せ綿」と銘のついた生菓子と菊のお茶を用意して、秋の気配を楽しんだ。前夜に菊の花を真綿で覆って夜露と香りを綿に移して、翌日その綿で顔や体を拭いて邪気を追い払い、長寿を願う、という行事から発想を受けたお菓子は、毎年秋の始まりを実感するお菓子だが、和菓子屋さんそれぞれがあって楽しい。

(着せ綿)
夜露と書いたが、この夏、乃し梅本舗佐藤屋さんの「空ノムコウ」と銘のついた錦玉羹を取り寄せた。紫色と青色のグラデーションで表現された夜空、散りばめられた気泡は宇宙に広がる星、飽きることなく眺められ、七夕の頃のお茶を楽しませてくれた。

(空ノムコウ)
また一緒に取り寄せた「頂(いただき)」という柚子の香りがする羊羹も、酷暑の日、目に涼しさをよんだ。

(頂)
この夏も色々なお菓子を用意してはお茶を楽しんだが、岐阜県本巣郡の界隈に伝わる郷土菓子「みょうがぼち」というみょうがに包まれたお菓子はまた本当に良かった。説明書きによれば、昔より田植えが始まる頃に家庭や農作業の合間におやつとして食されてきたとのこと。小麦粉の生地の中身は珍しくそら豆の餡で、それを ‟みょうがの葉” で包んで蒸したお菓子。みょうがの清涼な香りがよく移り、火照った体へのおやつに申し分なし。以前、三重県の旧宮川村に素人のお茶作りを楽しみに出かけていた頃、地元のお母さんが毎年、朴の葉で包んだヨモギ団子を作ってくれていたが、やはりそれも昔は田植えの作業に欠かせないおやつだったと聞いた。各家庭に伝わる味があるとのこと。いいなぁ、こういうの…。すっかり気に入った「みょうがぼち」だが、5月下旬からみょうがの葉がなくなるまでの間の季節限定のお菓子とのこと。葉がなくなるまで、という終わり方もなんとなくいい。そして、このお菓子が阿蘇の農園(ぽっこわぱ)の焙じ茶がぴったりだ。この組み合わせでぜひ、ひと息ついてほしいな、と周りに紹介したかったが、今年は例年以上に、ぽっこわぱ農園の煎茶も焙じ茶も仕上がりがゆっくり。とうとう9月になってしまったが、ようやく仕上がり、出荷出来るとの連絡が入った。おすすめの「みょうがぼち」とご一緒にとはいかないが、
今年の熊本の農園の煎茶、焙じ茶、今週中には入荷予定です。長くお待たせしてしまいましたお客様にはご迷惑をおかけいたしましたが、後少しだけお待ち下さい。例年通り、香りよく、こくのあるお茶をお届け致します。
- 2022/09/09(金) 01:55:21|
- 店主の日記
-
-