山からのたより その21 2016年冬の巻
居心地のいい井戸入り山林!
池谷キワ子
暖冬と言われていた今年ですが、ここへきて寒さも増し、雪が積もりました。
1月18日には15センチほどで、粉雪の舞うこの時期なのに重く湿った雪、少し森林に
被害があったようですが、まだ実態はつかめていません。
今回はみんなのお気に入りの森林の紹介です。
それは井戸入り山林と言って、養澤の家のすぐ裏手、井戸入沢に沿って13ha
(ヘクタール)がまとまっている我が家の所有林地です。
そのうちの7ha、沢の左岸が28年生のヒノキ林になっていて、植えた当初から、
作業員のユウさんたちやボランティアの協力を得て、私自身ずいぶん通い詰めて、
大事に育ててきました。
この林地は、1986年に激甚災害となった大雪害が発生して、森林すべてが潰れて
再植林したものです。40年生も60年生もほぼ全滅で、裂けて曲がり折れ、片付けて
跡地に植え始めるのに3年もかかってしまいました。

(井戸入り山林、1986年の雪害場面1)

(井戸入り山林、1986年の雪害場面2)
私の家から緩やかな山道を15分ほど井戸入り沢に沿って登ると、この雪害跡地植え
の林地に到着します。70年の歳月を経て伐り出して商品となるスギ・ヒノキですが、
幼齢林時代がもっとも手がかかります。よろよろして幼かった木々の世話に何度ここ
へ足を運んだか、数え切れません。7歳ぐらいからすっとボランティア「林土戸」
「そらあけの会」にもお世話になってきました。
中ほど地点に、たき火のまわりを間伐木でかこって休憩所が作られています。
写真は1995年下刈り大会の会場になった時のものです。
ボランティアが草を刈っている姿が見つけられますか?

このときヒノキは7歳。右は同じ場所で2013年、そらあけの会が枝打ちを6メートル
までしている様子です。今年(2016年)28歳。しっかり育ち、草に埋もれて窒息しそう
な幼い苗のころ、雪で曲がって起きられず、世話されたことを木々たちはすっかり
忘れたようで、大人の樹の風格をかもし出してきました。植えたばかりの7年間は、
炎天下の草刈りを毎年してやり、その後は枝打ち2回、間伐1回して、写真のように
林内には光が入って下草が生え、緑のダムの効果ある森林になってきます。
写真でおわかりいただけるでしょうか。

(光が差し込んだ林)
井戸入沢は日照りが続いてもけして涸れることなく、このように透き通った水を
サワサワと流し続け、沢沿いの道を歩くと、目にも耳にも心地よいものです。

(透き通った水が流れる井戸入沢)
何百年もの昔から、周辺の家々の大切な飲料水でした。
夏には孫たちが井戸入りで虫取り、沢歩きで大はしゃぎでした。

(虫取りにおおはしゃぎ!)
この水辺に春は蝶々、夏はオニヤンマなどのトンボ、ルリビタキなどの鳥たちが
来て水を飲み、水中にはサワガニやヒルまで居て、イノシシやシカの足跡まで
周辺についていたりして、水の流れは生命体の憩いの場所です。

(お茶場と呼ぶ休憩所での森林見学者たち)
そらあけの会では3年前「海布丸太」を仕立ようと、すこしのエリアですがスギを植え
ました。ヤマザクラの咲く4月上旬が植え付け時期です。苗は2尺(60センチ)。
これから十数年後に手すりや垂木(たるき、軒端に使う小丸太)に仕立てる予定です。

(スギを植える作業場面)
同じ林地に通い、成長していく木々を見守り育てていく、山は、春に芽吹き、夏は
緑にあふれ、紅葉し、寒い時期は眠りに入る。光の踊る晴れの日と小雨に煙る霧の日
では大違いの林内です。
日々を重ねて山に入り、木を育て続けると、やっと林業の面白さがわかってきます。

(ヤマホロシ)
「ヤマホロシ」(赤い実の写真)は部分的にですが秋には群生して地面の広がり晩秋
には沢沿いが「フユイチゴ」の赤いカーペットに覆われます。初秋の「ツリフネソウ」は
お茶場前の小沢にいつも咲きそろう、年によって草刈を遅くしたりすると見られない
こともあります。
さまざまな花や実が季節を間違えず現れる井戸入りは、それだけ多くの人や動物や
鳥が徘徊して、種子をまき散らした結果といえます。
山案内の地図の井戸入沢お茶場付近を貼りつけます。

右の寫眞はワサビ田です。私がこの世にいなくなってから数十年して、やっと伐期が
くるこの森林です。
はたしてそれまで雪害にも会わず一人前の材木として出荷できるでしょうか。
- 2016/02/11(木) 22:22:48|
- 山からの便り
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