山からのたより その16 14年夏の巻
池谷キワ子
清水茶寮のみなさま、ご無沙汰しました。
パソコンを替えたりするうち私自身の身体的トラブルも発生して
季節が廻って来てしまいました。
今年の夏はなんという天候の不順さでしょう。特に西日本や裏日本は
びっくりするほどの雨量で、広島市での山林崩壊は犠牲者が多数で
ほんとうに痛ましい出来事でした。
今回は「山の香り」について書きたいと思います。
山に入るといつも湿った土や草の自然な香りを感じます。
とくに芳香というわけではないけど、なぜか心が落ち着く気分になるのです。
花では、独特の香りを発するのは「ヒサカキ」の花。
春まだ早いころ個性的な匂いをかなりの範囲に撒き散らして強い自己主張しています。
これに出会うと「春の息吹きが萌え出してきた!」と思うのです。

(↑「ギンリョウソウ」6月)

(↑間伐したら「キンラン」出現、白花は「ウツギ」4月)
山で匂い立つものは「サンショウ」です。
下刈りでこの小さい木を伐ると、辺り一面に飛び散る爽やかな香り、
おもわず深呼吸してしまいます。サンショウは実も葉も幹も匂いの塊です。
棘が枝に対生しているのが「ホンザンショウ」、互生していれば「イヌザンショウ」と
いって香りが少ない品種です。
サンショウは実も葉も食卓に欠かせません。幹は「すりこぎ」です。
いまブームの和食ですが、「かおり」の要素が大きいと思います。
もっとも外国でも、ハーブ、香草、香辛料がたくさんありますけれど
。山菜は普通の野菜に比べて特に匂いが強く、ワサビ、フキ、茗荷、シソ、山ウド、
どれもその味わいには香りの部分が強いですね。

(↑「ツリフネソウ」 9月)
山でかおりの強い木といえば、もちろんわたしたちが育てている「ヒノキ」。
油脂を多くふくんだ芳香が虫を寄せ付けないので、この材が長持ちするのです。
これを抽出して芳香剤エッセンスも出回っています。
「クサギ」と「コクサギ」、花が似ていても科が違っているので、葉の匂いは大違いです。
どちらがよい匂いか、人によって差があります。
嗅覚は個人差がとても大きいのだそうで、みなさまにも一度試していただきたいものです
。目も耳も人より劣っている私ですが、嗅覚だけはかなり自慢できます。
動物のほうが優れているといわれる嗅覚です。

(↑クサギの実10月)

(↑「イワタバコ」滝の周辺に群生 7月)
花の季節になると漂ってくるかすかなよい匂いは、どの花からやってきているのか、
しっかり見届けないでいつも山仕事を続けてしまっています。
山に居ることの気分のよさの一端には、こういったさまざまな「山の香り」があるからでしょうか。
動物の死骸が発する腐敗臭も、
木々の精気「フィトンチッド」が消してくれるのだとどこかで読んだ記憶があります。
「そよ風」もこういった香りを乗せてきてくれる、目には見えないけど素敵な存在なのです。
- 2014/08/28(木) 10:44:44|
- 山からの便り
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