
2月10日は首都圏でも今年二度目の大雪の予報が出た。翌朝には太陽がいっそう眩しく見えるような晴天となったが、今年は日本海を中心に、積雪のすごさを伝えるニュースが続いている。
東京で今年初めての雪の日、北海道の石狩在住の方から九州宮崎の<椎葉村の野生茶>の注文を頂いた。このお茶は、この山の村でも、ほとんど作る方がいなくなってしまった、昔ながらの手作りのお茶だ。もちろん、手作りだから、少量しか仕上がらない。そんなわずかに作られるお茶が、日本のいくつもの山を越えて北上して、石狩まで届いて、そこで一服のお茶でひと息ついて、体を温めて頂けることを思うと、仲介者としては嬉しくて仕方がない。さらにはその後、注文主さんから素敵な話を添えて頂きました。ご紹介することご快諾頂き、色々な場面が浮かび、色々な思いがくみ取れる為、原文のまま記させて頂きます。
椎葉村は、私の父の故郷です。
父が生まれた冬の日の朝は、椎葉には珍しい大雪が降ったそうで、
それを見た曾祖母が「この子は遠いところに行くことになるかもしれない」と言ったとか。
椎葉山茶は、在りし日の曾祖母が学生だった父のために手ずから摘んで釜で炒り、
北海道まで送ってくれた記憶の品とのこと。
この度、御社のHPで見せていただき、父の誕生日の祝いにと思った次第です。
春の新芽の季節を迎え、家族の為に茶葉を摘み、釜で炒っては揉んで、炒っては揉んでを繰り返す、かなりたいへんな作業を、ご曾祖母様はどんな思いでこなされたことか。思いが詰まったお茶を飲みながら、お父様はいつも遠い故郷を思い出したことでしょうし、慰められたり、励みになる思いも湧いてきたかもしれません。そんな大事なお父様の思い出を、数十年経って、またご子息様が椎葉の村から届けてあげたい、と思われたのですから嬉しい事この上ないお話です。家族の為に作られたお茶は、その家、その家のこだわりの味があるはずですが、椎葉村のお茶ならではの独特のお茶の香りが、お父様のご記憶と重なるとよいなと願う気持ちでお届け致しました。この冬、東京も寒い日が続いており、私はこの<椎葉の野生茶>を少量熱湯に入れて少し煮出して楽しんでいます。美味しいですよ。手作りのお茶、ぜひ、お試しになってみて下さい。
アップした写真は和久傳さんの季節の羊羹「雪の灯」。私はこのシリーズの「笹ホタル」が一番好きだが、雪明りを見立てた、たこの羊羹も美しい。
- 2022/02/11(金) 14:38:19|
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