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日本茶の店 清水茶寮からのお便り

店主の徒然日記、ハーブ園から、森林から便りが届きます・・・

山からのたより  その31  2021年秋の巻

山からのたより  その31  2021年秋の巻
    
 「日本の木を使っていくこと」    
                                         池谷キワ子 

清水茶寮のみなさま長引くコロナ禍でいかがお過ごしですか。
山はもうすっかり秋です。異常気象を生む二酸化炭素、その削減には一日も早く少しでも多く取り組んでいかなければならない課題です。一方、樹木は空気中のCO2を炭素としてその身に取り込み、燃やされるまでずっと蓄え続けています。
これから書くことは清水茶寮の皆様はもう十分ご承知のことでしょうけど、次々やってくる未曾有の異常気象を思うと書かねばいられなくなりました。

先日新聞で住宅会社が国産材100%を使った家を推奨し、壊される家からの廃材再利用も進めているという記事をみました。海外からたくさんのCO2を排出して運ばれてきた外材を使用するより、身近な日本の木材を使っていく方が脱炭素にも大きな貢献です。日本の工場で生産される非木製の建材でさえも、国産材を製材するのに比べれば、その工程でかなり大幅にCO2を生みだしているのだそうです。
「木造の家は都市の森」とも言われ、建築に木を使うこと、廃材を再利用することは、さらに長く木材が炭素を貯留し続けることです。その上使い古された廃材の味わいは、時間を経たものの持つ古色蒼然とした風情やぬくもりがあり、それが塗装のない無垢の木だと、木目もきわだって美しいのです。

多摩地域でまっとうに育てられた材を「多摩産材」と名付けて認証する制度は、10年以上継続されてきました。東京のCO2を吸収してくれた樹木です。が、その認知度が一向に進んでこなかったのです。私もその制度を推進する委員の一人なのですが、この度その呼称を再検討し、新たに「とうきょうの木」と決まりました。起伏のある東京都心の土地は山の手と言われ、昔は「四谷丸太」の産地であり、「武蔵野の雑木林」は薪炭や落ち葉の畑作肥料として人々に利用されてきました。街路樹を好み、庭木や生け垣、鉢植えの草花、身の回りに緑を纏うのが日本人の志向です。近頃は新たに東京湾に「海上の森」も出来ましたから、ふさわしい名前になったと思います。適切に管理された森林からの材が、流通経路、トレーサビリティを明確化して消費者までしっかり届くよう、このブランド名をさらに強力に広めていくことになりました。

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日本では古来から、誇れる木の文化があらゆるところにあったのに、近年、急速に見放されてしまいました。建築では欄間、鴨居、丸窓、床の間、その周辺の組子や木彫り、家具や食器に漆の塗装なども、建具師や経師屋さんの出番が減り技術が廃れています。生活の洋風化も原因でしょう。
私の生家である養沢の家には、明治40年建立の純和風造りの離れ屋があり、トイレが漆塗りです。旧式の造りなので、今は使っていませんが。また、ケヤキの一枚板の門には漆が塗られていました。今ではすっかり無垢材の風情なので、昨年、天然性塗料を塗ってもらいましたが割れが生じてきています。CHINAが陶器を意味し、JAPANが漆器の意と聞きます。漆はいまではほとんどが中国製とか、耐久性のある優れた素材で大事にしていきたい伝統文化です。
近年は船、橋、柵、階段、電柱の屋外建造物が、木製だった時代から抜け出し、長持ちし腐らないという利便性を誇ってきましたが、プラスチック、コンクリートの廃棄物が消滅しないといった危険性にも直面することになりました。プラゴミのチップが海水や魚の内臓に含まれているのも大きな問題です。
一方、木の効用は果てしなく、香りには薬効があり、夏涼しく冬暖かい素材で住み心地もアップします。人間の心に潤いをもたらす樹木草木、自然界の生き物にふれることは、精神の均衡が保たれるのだという気がします。
ただ、こうは言っても木材には、腐りやすい、重たい、反ったり変形したりする、といった弱点もありますが、実はそれが長所にもなっていて、吸湿作用とか、繰り返して造ることで技術の伝承にもつながっています。木ばかりでなく、紙、土、砂、漆喰、布、という日本建築の天然素材はゴミにならないのです。
近頃のウッドショックと言われる木材価格の一時的高騰はコロナの影響です。流通の滞り、米国の需要増大から起こったようですが、日本の山からは伐採搬出の生産性が悪く、すぐにこの波に乗りにくいのが現状です。複雑な山の地形、技術者の衰退、細切れの所有形態も一要因になっていて、林業が長年の低迷から脱出するためには、ゆっくりと目指す方向を定めて進めていくのがいいのだと私は思っています。

<夏から秋へ山を彩る花々の写真を送ります>

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シュウカイドウ8月 

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キバナアキギリ8月↑

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キツリフネ

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養沢川沿いネムノキ7月 
  
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ヤマユリ7月 根が美味しいのでイノシシの食害により山ではほぼ全滅

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金剛の滝 手前にイワタバコ
 
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 ブルーベリー8月 今年は収穫が少ない

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ツリフネソウ

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クサギの花 八月中旬

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キンミズヒキ

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ホタルブクロ ホタルの飛び交かう
7月上旬



  1. 2021/09/02(木) 11:32:09|
  2. 山からの便り

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Author:せいすいさりょう


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