
コンクリートからぎらぎらと照り返す日射し。近所への買い物と言えども、日傘を持って出なかったことに後悔しつつ、急な坂道を下っていると、目の前から自転車が上ってきた。軽々と電動自転車を漕ぐお母さんと、荷台の小さなか子供の、はしゃぐ会話が通り過ぎて行く。子供の嬉しさが、風にのって伝わってくる。ちょっとすると、坂の下の方から女子学生が声を上げている。「すみませーん!すみませーん!!」と叫びつつ、一生懸命駆け上がってくる。背中に大きなリュックサックを背負い、顔を真っ赤にしながら。どうしたのかな、あんなに走って大丈夫かな、と思っていたら、「すみませーん!ハンカチ落としませんでしたかぁ!」の声が、通り過ぎた私の背中越しに聞こえてきた。そして程なく、「きゃぁー。すみません!…。」のお母さんの声が、随分坂を下ってしまった私の耳にも届いた。女子学生はどの辺りでハンカチを拾い、あの親子を追いかけ、坂道を上ってきたのだろう。
帰宅して即席で冷茶を作り、火照った体を鎮める。さっぱりとした<奥伊勢の煎茶>を濃いめに淹れて、氷を入れてすぐに出来上がる冷茶でクールダウン、はこの夏随分助かっているが、今日の、一生懸命坂道を駆け上ってきた女の子の行為は、思い出す度に、爽やかな気分にしてくれそうだ。
- 2021/08/09(月) 16:00:38|
- 店主の日記
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