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日本茶の店 清水茶寮からのお便り

店主の徒然日記、ハーブ園から、森林から便りが届きます・・・

春を告げた クレソン

故郷からのクレソン
新聞の広告用紙に包まれて、届いたたくさんの野菜。
美しい黄緑色の、茎の細い、なんとも柔らかそうなクレソンに目が止まり、父の故郷
に春が訪れたことを知り、気持ちがほころぶ。

学校を卒業すれば、長男以外の男子は家を出るのが当たり前、父も長靴とワイシャツ
2枚だけを持って東京に出てきたという。その時から祖母は父に季節を問わず、故郷
の産物を送り続け、今は後を継ぐように、畑をもつ姉の叔母たちが合間をみては、自
らの畑の野菜や特産物を送ってくれている。
東京の台所事情を考慮して、泥付きの野菜を丁寧に処理して、きれいに整えて送る
作業は手間のかかることだが、もう何十年も続いている。
年がら年中送り物が届くが、届く度に父は「有難いな、有難いな」と目を細め、一番に
箱を開ける。飛び出す田舎の匂いを確かめているようで、母もその楽しみを奪いとら
ないよう、箱を開けることだけはいつも父に譲っているが、叔母たちはどんな気持ちで、
この荷を作っているのだろうか。
荷物は我が家族宛に送ってくれるのだが、そこには、数十年前の、年の離れた弟が
故郷を立った時の、安否を思う気持ちがずっと続いているのか、その愛情を思う。

今世界中に、故郷の物を送りたくても送れず、故郷の物を食べたくても食べられない
人たちがたくさんいることを思うと、なおさら、届く野菜たちが有難い。本当に有難い。

届いたクレソンは早速水洗いし、軽く塩。トーストしたパンに<バジルペースト>を塗り
たっぷりとクレソンを挟み、シンプルなサンドイッチにして頬張る。柔らかな、食べよい
旬のクレソンは、香りも辛みも心地よい。

3月11日が近い。4年前の春はとても寒かった。・・・思うこと色々。







  1. 2015/03/08(日) 11:00:04|
  2. 店主の日記

2月の思いがけないお客様

平成13年と平成18年のお茶
2月の日。飲んだお茶は、もう、10年以上前に作られた、平成13年と18年の宮崎
県の椎葉村のお茶。自然のままに育った、山のお茶。
10年来の知人のA氏が、思いがけなく海外赴任が決まった。
「この年になってびっくりしたよ。」
飲む前に焙じている茶葉の匂いを思いっきり吸い込みながら、ポツリ。
物騒な世の中。寂しくも単身赴任とのこと。
「10年以上前のお茶を、思い返したようにこうして焙じては飲むってさすがだなぁ。
白井さんも、あのアメリカ人のなんとかって言う絵本作家のあばあさんに憧れ
てる口でしょ。丁寧に暮らしてる感じがあるもんね。」

「ターシャ・チューダーのことですか?
ターシャの〝思うとおりに歩めばいいのよ”って言う生き方を通してのメッセージは
説得力がありますよね。」
「実践したってのがすごいよね。男はなかなかね。
ま、お茶だって、手をくわえりゃあ10年経ってもこうやって楽しめるんだから、僕も
向こうにいったら(自分に)手を加えて、味のある年配者を目指さないとね。」
・・・・
「勉強になったお茶でした。では10年後っていう程じゃないけどお元気で。」

「お元気で。」の短い祈りの言葉が心に残る。
いきつもどりつの春への時間。
春に向かう季節の柔らかな陽射しが、優しく思えた。
  1. 2015/03/05(木) 15:07:28|
  2. 店主の日記

2月の思いがけないお客様

ハブ茶
昼近く、PCに向かっていたらいきなり襖が開き、嫁いだ妹が立っていた。
「あれ?どうしたの?」
「・・・お茶飲みながら話があるんだけど。」
え?オ・チャ・ノ・ミ・ナ・ガ・ラ?

私はそれこそ「お茶でも飲みながらお話しましょう」というフレーズはよく使うが、神妙
な顔でそれを言われると、なにやら怖い言葉だな、と初めて思った。
なにか怒らせるような悪いことしたっけかな?
「緑茶でいいの?」
「アップルパイ買ってきたから、コーヒー入れる。」
・・・妹はお茶も好きだがコーヒーが好き。
届いたばかりの<ハブ茶>をすすめようとも思ったが、やめておく。
「で、何?」
「ねーこれさぁ、どうやって弾いたらいいか分かんないんだけど。」
はぁ?ギターを習い始めていた妹が、先生にうっかり口にしたことで、ハードルの高い
曲を弾くことになり、お手上げらしい。真剣な顔して、これかいな。体の力が抜ける。

「お茶を飲みながら・・」のセリフが急に可笑しくなるが、それだけ真面目にやっている
のだから、ま、いいか。
さて、私のギターの練習歴なんて微々たるものだから、楽譜見ながら二人でおちおち。
だったらいっそ、まだましであろうピアノで曲はこんな感じと覚えた方がいいかも、と全く
ギターには役に立たないアドバイスをすることになるのだが、仕方がない。
数十年ぶりに、ピアノを弾く妹の指と背中を見守った。妹とは中学生まで一緒に電車で
ピアノのレッスンに通った。小春日和の長閑な昼時。昔、昔を思い出す。

「ありがと、ありがと。どうにかなると思うわ。」
子供が学校から帰ってきちゃう、と母が用意した昼食も食べずに慌てて帰っていった妹。
届いたばかりの<ハブ茶>とサンドイッチで昼食を取りながら、事の次第を話すと、母は
可笑しそうに笑った。

今季のハブ茶の収穫も、天候や野生動物の被害でどうなることやらとひやひやしましたが、
無事入荷を始めています。手間も暇もかけて仕上げているハブ茶は、香ばしい美味しさです。
美味しさと効能で、一年をまたずに売り切れてしまう評判のよいお茶です。
日常のお茶として、おすすめしております。
  1. 2015/03/01(日) 16:34:29|
  2. 店主の日記

お店の紹介

せいすいさりょう

Author:せいすいさりょう


清水茶寮(せいすいさりょう)では、
無農薬・無肥料の、昔ながらの製法のお茶をはじめ、品種のもつ個性を活かして作られた煎茶、挽きたての抹茶、有機農法(バイオダイナミック農法)によるハーブなどをご用意して、日本のお茶の美味しさをご紹介しております。
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