山からのたより その9 ~水のゆくえ~ 池谷キワ子
今年も暑さはまだ続いています。
そこで今回は「涼」をお届けしたく、水の流れについて書きます。
水という存在はなんともいえず魅力的なものですね。
あらゆる生命は水なしでは生きられないし、人体の約60%は水なのだそうです。
ヘレンケラーは、水に触れて、掌に書かれた「ウオーター」が最初に知ったことばだそうですが、
たしかに水という液体の感触は独特なものです。
わたしがいつも足繁く通っている裏山の井戸入り沢は、そんなに奥が深くないのに、
渇水の時期でもかなりの水量で、澄んだ水を流れ出し続けます。集落に水道が引ける前までは、
長い間、貴重な飲料水の役目をはたしてきました。いまではこの沢は2軒の家が、
池に引いて鯉を飼っています。水道水だと魚が住めない、不思議なことです。
山の地面は団粒構造の生きている土。そこに留まり地下水となる水
岩間から湧き出る清水が、井戸入り沢となっていく。
井戸入り沢
森林に降った雨が、地下に吸い込まれて浸透した水が地下水となり、
浄化されミネラルも含まれて、おいしい清水となって湧き出てくる、この天然の仕組みはすばらしい自然装置です。
沢沿いの石垣にびっしり咲くユキノシタ 6月初旬
養沢川は十里木で檜原村から来る秋川に合流するまで、御岳山、大岳山に端を発し、
せいぜいその長さは10キロ程度です。
この川は大雨の時でも、かなり透明な水を保っていて、山崩れさえ発生しなければ濁らないのがみんなの自慢です。
滝も随所にあり、夏は緑陰のなかで涼を求める人たちで賑わっています。
井戸入り沢の注ぐあたりの養沢川
御嶽神社からすこし下ったところにある「七代の滝」。
マイナスイオンを満喫できる。
養沢川源流である。撮影 西川みつ子
滝の側面にはイワタバコ 7月
「ようざわ」という名は、「いわお沢」がなまったものらしいと、つい最近知りました。
たしかに川の中には大きな岩石がごろごろしています。
そして、水中の石に緑の「苔」がついていて、それを食する「カワニナ」貝が増え、
それらを餌にする「ゲンジホタル」が 7月初頭には養沢を飛び交います。
森林の腐葉土をくぐり、ミネラルを含んだ水は、苔に養分を与え、アユやヤマメを育てるのです。
ホタルの飛び交う名所、徳雲院そばのネムノキと養沢川。
手入れの行き届いた森林は「緑のダム」です。
養沢川の水は、秋川となって五日市を東へ向かって流れ、拝島付近で青梅の方から来る多摩川の本流に注ぎ込み、
東南方面に調布、二子、丸子、六郷と経て東京湾に流れ込んでいます。
この流れに沿って材木が、最初は一本ずつの「管流し」の方法で養沢を出発、五日市周辺で「筏」に組まれ、
江戸まで到着。大正の末期ごろまでの輸送手段でした。
さっそうと筏を操る筏乗りは、山仕事仲間の華だったようです。
五日市を流れる秋川は今年も水浴び客で満員
自作の不出来な和歌を披露します。
枝打ちや間伐をして、林床をみどりに保つことが、健康な森林となって、多摩川の水量の平準化をも担っているのです。
「多摩川を 渡れば思う この一滴 われの枝打つ 山よりも出ず」
調布市を流れる多摩川、人々の暮らしのオアシスになっている。 撮影 大谷三男
- 2012/08/24(金) 10:41:58|
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当店のハーブをメニューにしてくれている、松陰神社前駅のすぐそばにあるカフェ“タビラコ”さん。
昨日は、清水ひろたかさんのギターライブを用意してくれた。
初めて聴いた清水ひろたかさんのギターの音色は、“綺麗”が最初の印象。
「さっき、ケーブル手作りですか?って聞かれたんですけど・・・そうなんです。ケーブルもケミカル
なものが使われているのと、そうでないのとでは全然違うんですよね。なので、金とか炭とか絹とかい
うもので、手作りしてるんです。めちゃくちゃ時間かかりますけど…。」と清水さん。
このお話はとても興味深かった。
“タビラコ”さんは、いつもはこじんまりとしていて、静かで気持ちよく寛げるカフェ。
食事も美味しい。松陰神社前駅のカフェ、とどこかに記憶されて、機会がありましたらぜひお寄り下さい。
- 2012/08/19(日) 08:54:01|
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先日からただ今電車ごっこがお気に入りの、小学校3年生になる甥っ子が我が家に来ている。
家いたるところ、駅名や通路案内、時刻表、広告を書いた張り紙が貼られている。
花が咲いている屋上は花畑駅、服が下がっている部屋はふく駅(漢字で書いていないところが情けない)
階段の途中には坂上駅と坂下駅、少々暗い階段はトンネル、といった調子だ。
一昨日は「アルバイトぼしゅう中」の張り出しが出て、私の隣の部屋はアルバイトの仕事部屋になっていた。
ドアには「仕事をすると、ちしきとちえがもらえます。アルバイトしませんか。」と書かれた紙が貼ってある。
知識と知恵は違う、と心得ているのか、思わず吹き出してしまった。私の部屋は、なぜか役場になってた。
職員は紙で作った亀(亀じい、と名が付いていた)とセロハンテープとハーブのエッセンス。「役場の職員に
しては頼りないメンバーだなぁ。」と言ったら、「亀じいは頭いいんだよ、セロハンテープはみんなを仲良く
できて働き者だし、これは(エッセンス)いい匂いでぇ、みんなを喜ばせるから、これだけで十分なの。だい
たい、役場は他の場所より一番多く働ている動物とかいて、い過ぎなくらいなんだよ。」となかなかなことを
言っていた。子供は面白い。この甥っ子は、水とお茶が好き。ジュースは飲まない。
6月のある日、梅畑をもっている友人がたっくさんの梅をもいで我が家に届けてくれ、その時5歳になる甥っ子
くんを連れて来てくれた。彼はすぐに仲良しになってくれた。
先日私が高熱にダウンした際、友人が甥っ子くんに「この前お家に行った私のお友達が病気になっちゃたの。」
と言ったら「じゃぁ、お便り書かなくちゃね。」と言ってこのお手紙を書いてくれたそうだ。私の似顔絵らしい。

「これお姉さんに渡す時、何か言うことある?」と聞いたら、しばらく考えて「大好きー。」叫んだそうだ。
全くもう、可愛いとしか言いようがない。この甥っ子くんもお茶が大好きだった。
先月は、3歳になる女の子がお茶のお稽古に来てくれた。浴衣を着てちょっと正座までした。
熱い湯を使うのは心配だったので、お稽古は冷たい水で抹茶<
清爽>を点ててもらった。この抹茶はお母
さんに飲んでもらうつもりでいたが、本人が、もう、ぐびぐびぐびぐび、「美味しい。もっと飲む。」と夢中に
なって「もう一回やる。」と上機嫌。
へぇ。ここまで美味しいと感じてもらえるとは予想だにせず。子供もお茶の美味しさが楽しめるのか。
今日はすっかりお茶の話とは離れてしまったので、最後にもう一度夏のおすすめのお茶のご紹介を。
抹茶<
清爽>を冷たい水で点てた(溶かした、が正しいのかもしれないが)お茶を、子供が喜んだことを書いたが、
大人にも大好評だ。今月のどの会でも喜んでいただいている。抹茶は熱湯でないと駄目、と思っていらっしゃる
方が多いように感じたが、ちゃんと振るいにかけて空気をふわりと含んだ抹茶は冷水でもよく溶けてくれる。
暑い日元気がでる飲み物として、ぜひぜひお試し下さい。
※<
清爽>は、出来るだけ挽きたての抹茶をお届けするために、ご注文いただいてからお手元にお届け
するまでにお時間を頂戴しております。ご了承下さい。
- 2012/08/15(水) 20:36:23|
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刺繍は好きだけど縫い物は不得意、という友人が夏用に麻のカーテンを自分で縫ったという。
「縫い物上手じゃないし、好きでもないけど、時間かけてひと針、ひと針指しながら縫っていくうちに、
“心を込める”ってこういうことかって初めて感得したわね。頭では"心を込める”ってなんとなく分っ
ていたつもりになってたけど、ほんと、“心を込める”ってこういうことなんだって、うまく言えないけど
実感したわね。」
・・・羨ましい体験です。
さて、ティーバッグになっている<
冷やし茶>が好評です。
昨年までの仕様(…と言っても毎年味わいは変りますが…)より、一層喉越しのよい、スッキリとした
美味しさが楽しめるお茶になっています。無農薬の自然のままの美味しさは、子供たちにも人気です。
私は水のペットボトルに、直接ティーバッグを入れて作っています。それを氷にしておくこともあり、
重宝しております。盛夏の時期ならではの、“清涼”のご馳走をぜひお楽しみ下さい。
- 2012/08/09(木) 23:23:49|
- 店主の日記
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お詫びしなければいけない事があります。
今年も、大麦が失敗してしまい、<麦茶>が出来ません。
昨年は鳥の害にあったので、今年は撒く場所を変えて育てていましたが、
今年は、鹿にやられてしまいました。
また、今年もお手元にお送り出来ない事、申し訳ありません。
家の近所の方に、大麦が失敗した事を話したら、
2年前、容三さんが炒った麦茶を出してきてくれました。
容三さんの形見として、大事に封も開けずに持っていたらしいのですが、
私がお客さんへあげられる分がなく、困っているのでは… と気づかってくれました。
暖かなその方のお気持ちに、私は、また頑張ろうと、思いました!
農業はその時期に失敗してしまったら、その一年は商品がなくなってしまいます。
今回の失敗を教訓に、来年は、実り多い大麦を作りたいです!!
尚 美
- 2012/08/07(火) 22:19:49|
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満月の夜。裏のお不動様では盆踊り。炭坑節が耳に届く。
「あー、美味しい。今日初めてお茶を飲んだ。」少し濃い目に淹れた<
昔馴染み>を、ソファーにど
っかり腰を下ろした父が本当に美味しそうに飲んだ。日中、大汗をかきながら仕事に励む父の、熱い
お茶で一日の仕事の疲れをぬぐった安堵感が、伝わってくる。
熱い熱い夏の日はティーバッグの<
冷し茶>が美味しい。が、<
昔馴染み>も美味しい。熱く淹れた一
服も、水と茶葉を入れて冷蔵庫で冷しながら作る水出しでも美味しい。無農薬、無肥料のくどさのない
美味しさは、飽きることなくいつでも飲みたくなる。
無農薬の茶畑は、上記写真の小藤さんが、真夏の日も真冬の日も毎日、朝に夕方にと管理して下さって
いる。今日も大汗を流しながら、雑草取りだ。小藤さんは木の仕事をなさっている方で、茶農家の方で
はないのだが、「在来種のお茶を残したい。」という声に耳を傾けて下さり、力を貸して下っている。
5月に「森は海の恋人」の運動をされている、畠山重篤さんの講演を聞くことができた。
気仙沼湾で牡蠣の養殖業を営まれている畠山さんは、豊かな海は森づくりが大切であると、長年植林活
動を続け、今年、国連のフォレストヒーローを受賞された。
豊かな海の元となる植物プランクトンは、山の落葉広葉樹の腐葉土からできる「フルボ酸鉄」が大きな
役割を果たしているそうで、日本は3万5千ほどの川が海に流れ込んでいるので、この「フルボ酸鉄」が
たくさん運ばれれば、海はそれだけ豊かになる、とのこと。
日本にこれだけの数の川が、中央から海にむかって西にも東にも流れていて、それが豊かな海を作り出
しているという自然環境の恵みをあらためて認識した。このお話にご興味があれば、ぜひ畠山さんの著書
をお読み下さい。幾つか著書が出ています。
講演を聴きながら、<
昔馴染み>の茶畑の裏にある広大な雑木林を思った。

この写真ではよく分らないと思うが、写真正面の雑木林は茶畑にたくさんの落ち葉を落とし、腐葉土と
なってくれている。葉に落ちる一滴の雨の雫が、いつかは海に流れ込み植物プランクトンを増やし、そ
れが動物プランクトンを増やし、小魚を生かし、大魚を生かし、人の命へと続いていることを想像した。
今までは目の前の茶畑のお茶のことしか考えていなかったが、地球はもっと大きく循環している。
<
昔馴染み>の里は林業の町。昔から森林を守り生かして暮らしをたてている。その里のお茶が、十
分に飲み頃になっています。疲れた体を労わってくれるような今年の<昔馴染み>、お試し下さい。
…お天気があなりよくなかった日の写真ですが、これが町を流れる宮川です

- 2012/08/05(日) 20:59:22|
- 店主の日記
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