3月3日雛の日に、茶道の師匠が最後のお茶会をご自宅で開いて下さった。
何代かにわたるりっぱな雛人形が広間にいく対も、いく段も飾られ、美しく、楽しいお迎えをいただいた。
お隣がたまたま茶道の先生でいらしたから、まだハイハイの頃からお邪魔して、なんとなくお茶の雰囲気
を楽しんでいたみたいよ、と笑顔で話される先生の御年は90歳近くなられた。点前の手順などは三の次
四の次、それにこだわり過ぎた、“茶味”のないお茶なんか嫌い、嫌い、と後年はよくおっしゃっられ、
稽古場はいつも和やかであった。私もその気になり、お稽古を重ねるよりも、伺っては今では考えられない、
昔の優雅なお嬢様の生活を聞かせていただくことばかり熱心であったが、先生はとがめることなく、お茶飲
んでおしゃべりしていくだけでよいのよ、と私の茶道の稽古を見守って下さった。
最後の茶会に、茶室には大事な床の間にどんな軸が掛けられるのか、朝の仕度のお手伝いに伺った私は、
そんなことが気にかかっていた。朝の仕度の際には、先生が学ばれた日本茶道学会の創始者が書かれた
“寿”の一文字軸がご用意されていたはずが、いざ皆様が揃って茶室に入れば “道”という一文字の軸が
掛けられており、胸に染み入った。ひとまず稽古場を閉じるというこの日、師匠はどんな思いで“寿”と
いう軸を選ばれ、最後の最後に“道”というこの軸にかえられたのか、90年近くの茶道人生に想像が及ば
ない。茶道における軸とはこいうものかと、よくよく教えられた。
少々寂しくなるけれど、これからは“侘び茶”を楽しませてもらうわ。
とお隣に座らせていただいた際に、先生が笑顔で独り言のようにつぶやかれた。
「これからは…」、か。師匠には恐れ入る…最後の最後には背中を伸ばされた。抹茶の美味しさを知って
いただこうと始めた抹茶の会が、いつのまにか基本の基本だけとは言え、茶道の稽古の形にしてしまった。
分っているつもりの自分がいないよう、心せねばならない。
3月。さまざまな卒業の場面があるが、恩師の見せて下さった幕引きは、長年のお香と茶の香りの染み込ん
古い屋敷の匂いとともに、「日本のお茶もいいな」と思う私の心を、底から支えて続けてくれそうな、そん
な場面になることであろう。これから“侘び茶”を楽しまれる、師匠のご健勝を祈るばかりである。
- 2012/03/24(土) 18:45:02|
- 店主の日記
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寒い日・暖かい日が 交互にやってきてますね。
宮崎では、例年より遅めに、山桜がやっと咲き始めました!
2月25日は、容三さんの一周忌の法事を行いました。
近所の方達が、持ちよりで、いろいろな お食事を作ってきて下さり、
テーブルには 皆さんの暖かな気持ちのお料理が たくさん並びました。

容三さんの懐かしい話しに、皆で賑やかに盛り上がりました!
27日の命日には、仲間達が集い、山の畑の作業を皆で一緒にして、
木を倒し、陰になっていた畑に光が入るようになりました。

畑からは、遠くに海が見え、見晴らしもよくなり
うみの風ハーブ園に新しい風が吹いてます。
容三さんの一周忌の法要を通して、周りの方達の暖かな支えを 大きく感じました。
私の中から 新たな力が出てくるのを感じました。
今年もこの場所で、ハーブを心を込めて育てていきたいです!
今、畑にはカミツレ(カモミール) の苗が、すくすく育ってます!

尚美
- 2012/03/20(火) 23:44:36|
- うみ風からの便り
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嬉しいこと、悲しいことあまりに色々なことがありすぎて、長かったような、でもあっという間に2月が過ぎてしまった。何よりなのは、我が同級生の無事な出産。忙しい日々の中で喜びを与えてくれた。が、子が成長して物心つく頃に、成人になった頃にも、各地の風土に根ざした、生活の中で繰り返し工夫されながら伝わってきた“食”が日本のここかしこに残っているだろうか、手に覚えさなければ伝わらない郷土の智恵の味わいがどれほど残っているのだろうか、といつもの心配が首をもたげる。
各家にそれぞれの作り方が伝わる、「これも日本茶か!?」と思うような味わいの<
岩しみず>などというお茶はどうなっていくのだろうか。作る側の心配だけでなく、ニ月の一か月だけでも「普段、急須でお茶を淹れて飲まない」という人にたくさんあった。8人目の方に会ってからは、数えるのがいやになって人数を覚えておくのをやめしまった。やれやれ。「急須に茶葉を入れるだけって、思うんですけど、それがなんだか面倒なんですよね。」と言われてしまうと、お茶屋としては、その面倒と思う気持ちを押してでも淹れたくなるお茶を用意するしかない。
そんな訳で、という訳では決してないが(昔ながらのお茶の木と製法で作るお茶など、数年に一度、見つけて教えてもらえるかどうか、といったほどしか残っていないお茶なのです)その土地ならではの在来種のお茶ニ2種類、新しく商品に加えました。
自然九州の在来種で作った煎茶<
野生茶>、奥伊勢の在来種で作った晩茶<
奥伊勢の焙じ晩茶>
どちらも個性的な香りと味わいです。今のところこのお茶に後継者なし。ぜひ、お試し下さい。
- 2012/03/02(金) 16:04:21|
- 店主の日記
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